傷病手当金とは
傷病手当金は、健康保険の被保険者が業務外の病気やけがにより仕事を休み、十分な報酬を受けられない場合に、生活保障として支給される給付です(健康保険法第99条)。
国民健康保険には原則として傷病手当金の制度はありません(一部自治体で新型コロナウイルス感染症に関連した特例措置が設けられた例あり)。会社員や公務員など、健康保険(協会けんぽ・健康保険組合)の被保険者が対象です。
支給要件
傷病手当金の支給を受けるには、以下の4つの要件をすべて満たす必要があります。
4つの支給要件
- 1. 業務外の事由による病気やけがであること(業務上や通勤途上の場合は労災保険の対象)
- 2. 療養のため労務に服することができないこと(医師の意見に基づき判断)
- 3. 連続する3日間の待期期間を完成していること
- 4. 休業した期間について報酬の支払いがないこと(報酬が支払われていても傷病手当金の額より少ない場合は差額が支給)
待期期間について
待期期間は、療養のため労務に服することができなくなった日から起算して連続する3日間です。この3日間には、有給休暇、土日祝日、公休日も含まれます。ただし、連続3日間が必要であり、断続的に休んだ場合は待期期間は完成しません。
待期期間が完成した後、4日目以降の仕事に就けなかった日に対して傷病手当金が支給されます。
支給期間
傷病手当金の支給期間は、支給を始めた日から通算して1年6ヶ月です。
2022年1月の改正ポイント
2022年1月1日の健康保険法改正により、支給期間の計算方法が変更されました。改正前は「支給開始日から起算して1年6ヶ月」(暦日ベース)でしたが、改正後は「支給を始めた日から通算して1年6ヶ月」に変わりました。これにより、途中で出勤して不支給となった期間がある場合、その分だけ支給期間が延長されます。同一の疾病について、通算1年6ヶ月分の支給を受けることが可能になりました。
支給額の計算方法
傷病手当金の1日あたりの支給額は、以下の計算式で求められます。
1日あたりの支給額 = 支給開始日以前12ヶ月間の各月の標準報酬月額の平均額 ÷ 30 × 2/3
計算例
支給開始日以前12ヶ月間の標準報酬月額の平均が30万円の場合:
- 標準報酬日額:300,000円 ÷ 30 = 10,000円
- 1日あたりの支給額:10,000円 × 2/3 = 約6,667円
なお、支給開始日以前の被保険者期間が12ヶ月に満たない場合は、「支給開始日の属する月以前の継続した各月の標準報酬月額の平均額」と「当該年度の前年度9月30日における全被保険者の同月の標準報酬月額を平均した額」を比較して、少ない方の額を使用します。
他の給付との調整
傷病手当金は、以下の給付と調整(併給調整)されます。
- 出産手当金:出産手当金が優先。傷病手当金の方が多い場合は差額が支給されます。
- 障害厚生年金・障害手当金:障害厚生年金等が優先。傷病手当金の方が多い場合は差額が支給されます。
- 老齢退職年金:資格喪失後の継続給付において、老齢退職年金が優先。傷病手当金の方が多い場合は差額が支給されます。
申請に必要な書類
傷病手当金の申請には、「傷病手当金支給申請書」を提出します。申請書は以下の4部構成です。
- 被保険者記入用(1枚目・2枚目):申請者本人が記入。氏名、住所、振込先口座、申請期間、症状等を記載します。
- 事業主記入用(3枚目):勤務状況や報酬の支払い状況について、事業主が証明します。
- 療養担当者記入用(4枚目):主治医が、傷病名、療養の給付開始日、労務不能と認めた期間等を記入します。
申請書は、協会けんぽまたは加入している健康保険組合に提出します。提出期限は、労務不能であった日ごとにその翌日から2年間です(健康保険法第193条)。
申請時のポイント
- 医師の証明が必要なため、受診の際に傷病手当金を申請する旨を伝えておきましょう
- 申請は1ヶ月ごとにまとめて行うのが一般的です
- 退職後も一定の要件を満たせば継続して受給可能です(資格喪失後の継続給付)
- 継続給付の要件:資格喪失日の前日までに被保険者期間が継続して1年以上あり、資格喪失時に傷病手当金の支給を受けている(または受けられる状態にある)こと
まとめ
傷病手当金は、病気やけがで働けなくなった際の重要な生活保障です。2022年1月の改正により支給期間が通算化され、より柔軟な制度になりました。支給要件や申請手続きを正しく理解し、必要な場合は速やかに申請しましょう。
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