賃金台帳の作成義務
賃金台帳は、労働基準法第108条により、すべての事業場に作成が義務付けられている法定帳簿です。使用者は、事業場ごとに賃金台帳を作成し、賃金の支払いのつど遅滞なく記入しなければなりません。
賃金台帳は、「労働者名簿」「出勤簿(タイムカード等)」と合わせて「法定三帳簿」と呼ばれ、労働基準監督署の調査時に必ず確認される重要な書類です。
賃金台帳は、日雇い労働者を含むすべての労働者について作成する必要があります。正社員だけでなく、パートタイマーやアルバイトも対象です。
必須記載事項
賃金台帳に記載しなければならない事項は、労働基準法施行規則第54条に定められています。以下の項目をすべて記載する必要があります。
賃金台帳の必須記載事項
- 氏名
- 性別
- 賃金計算期間:賃金の締め日から締め日までの期間
- 労働日数:賃金計算期間中の実際の労働日数
- 労働時間数:賃金計算期間中の実際の労働時間の合計
- 時間外労働時間数:法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超えた労働時間数
- 休日労働時間数:法定休日に労働した時間数
- 深夜労働時間数:午後10時から午前5時までの間に労働した時間数
- 基本給、手当その他賃金の種類ごとにその額:基本給、各種手当(役職手当、通勤手当、家族手当など)をそれぞれ区分して記載
- 賃金の一部を控除した場合はその額:社会保険料、所得税、住民税などの控除額
なお、日雇い労働者については、氏名と性別のみの記載で足りますが、その他の事項についても記載することが望ましいとされています。
記載にあたっての注意点
- 時間外労働、休日労働、深夜労働の各時間数は、それぞれ区分して記載する必要があります。まとめて記載することは認められません。
- 賃金の種類ごとに金額を記載する必要があるため、「諸手当一括」のような記載は不可です。手当ごとに分けて記載しましょう。
- 有給休暇を取得した日の取り扱いについても、労働日数や労働時間に適切に反映させる必要があります。
賃金台帳の様式
賃金台帳の様式は法律で厳密に定められているわけではなく、必須記載事項がすべて網羅されていれば、任意の様式を使用できます。厚生労働省のウェブサイトでは、様式第20号として参考様式が公開されています。
給与計算ソフトを使用している場合は、出力される賃金明細データに必須記載事項がすべて含まれていれば、それを賃金台帳として使用することも可能です。ただし、システムの出力帳票に不足する項目がないか確認しておきましょう。
保存期間
賃金台帳の保存期間は、2020年4月の労働基準法改正により、5年間に延長されました。ただし、経過措置として当面の間は3年間の保存で足りるとされています(労働基準法第109条、附則第143条)。
保存期間の起算日は、最後の記入をした日です。つまり、最後の賃金支払日に関する記入をした日から5年間(当面3年間)保存する必要があります。
なお、電子データでの保存も認められていますが、必要に応じて書面に出力できる状態にしておく必要があります。
違反した場合の罰則
賃金台帳に関する違反には、以下の罰則が定められています。
- 賃金台帳を作成しなかった場合:30万円以下の罰金(労働基準法第120条)
- 必要な事項を記載しなかった場合:30万円以下の罰金(同上)
- 保存義務に違反した場合:30万円以下の罰金(同上)
- 虚偽の記載をした場合:30万円以下の罰金(同上)
労働基準監督署の調査(臨検監督)では、賃金台帳の内容が必ず確認されます。特に、時間外労働時間数と割増賃金の整合性はよくチェックされるポイントです。未払い残業代が発覚した場合は、是正勧告を受けるだけでなく、遡って支払いを求められることもあります。
法定三帳簿の保存期間
- 労働者名簿:労働者の退職・死亡の日から5年間(当面3年間)
- 賃金台帳:最後の記入をした日から5年間(当面3年間)
- 出勤簿等:最後の記入をした日から5年間(当面3年間)
まとめ
賃金台帳は、労働基準法で作成・保存が義務付けられた重要な法定帳簿です。必須記載事項を漏れなく記載し、適切に保存管理しましょう。特に、労働時間の記録と賃金の計算に不整合がないよう、日頃からチェックする体制を整えることが大切です。
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